「政界のシーラカンス」と仲間たち

週刊新潮は2021年2月18日号で「政界のシーラカンス」の特集を組みました。
ドンピシャ!のタイトルです。
この一言に東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会森喜朗前会長の全てが包括されています。

この号発売の2日後森前会長は辞任しました。

これにたいしては「遅いよね」というあきれた気持ちと「世の中変わったのか?」という期待の気持ちが入り混じりました。

「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」発言が問題になった翌日の2月4日緊急”謝罪会見”が開かれました。
これは近年文春砲に撃たれた芸能人の定型となった
「すぐ」
「言い訳せずにうそつかず低姿勢で」
「心からのお詫びと反省」
をまねて切り抜けようとしたものと見られますがそもそも何を詫びたらよいのかわかっていなかったことで形式ばかりとなり逆切れするという失敗に終わりました。

さすがにこれで辞めるだろうと思ったところが、その様子はありませんでした。

ここから新しい波が日本に広がりました。
駐日大使館の方々や外国人アスリートの方々のSNS、そして海外メディアからの批判です。

オリンピック憲章に抵触するという方向性が明確になり、始めは「解決済」といっていたバッハIOC会長も、空気を読んで「完全に不適切」と修正しました。

これが王手となったのか辞任の運びとなったわけです。

これまでだったら居座る流れかと諦めかけていたところだっただけに「世の中変わったのか?」と晴れやかな気持ちになったことは確かです。

ですが。
もしこれが東京オリンピック案件でなかったら、世界から注目されていなかったら。シーラカンスの泳ぎを止めることはできたでしょうか。
正直、見通しは厳しいのではないでしょうか。

後任に川淵三郎さんをとの”密室”人事に菅首相は「透明性に基づいて決定すべき」と反対したといいます。
しかし、菅首相は当初「公益財団法人は独立組織だから組織委員の判断を尊重すべき」と逃げ腰の姿勢をとっていました。
少し前を振り返れば、日本学術会議任命拒否問題では「人事のことなので具体的な理由は控える」といっていた人です。
いったい「どの口が?」おっしゃっているのでしょうか。

川淵さんはいろいろとお話してくれる人です。今回も森前会長からオファーがあったことも歯切れよく話されました。
2006年のワールドカップ終幕後の総括会見では後任監督として交渉しているのを本当にうっかりしたのか、わざとなのか知りませんが、オシムの名前を口にされ、騒ぎとなったこともありました。

菅首相は川淵さんのこのリップサービス力を恐れたのではないでしょうか。
なにか言っちゃいけないこと言っちゃうことを恐れたのではないでしょうか。
これからオリンピック開催云々あるなかで「説明を控え」て強引にGOTOしようとするタイプの人には都合がよくありません。
シーラカンス政治を変えようということでは決してなさそうです。

海底を泳いでいるシーラカンスは1体だけでなく多くの仲間たちに囲まれています。
周囲に群生しているヒラメ、コバンザメ、ほかにも多種多様な生きた化石が生命力強く存在しています。

ただ、今回明るい兆しは福島県の聖火ランナーを予定していた男性が辞退されたことです。
年齢が57歳。「一国民が声を上げても通じない。聖火ランナーとして走る夢と引き換えに、少しでもこの声が中央に通じれば」と話されたといいます。
福島県はなんて素晴らしい方をランナーに選ばれたのでしょう。

男女雇用機会均等法第1世代の私たちは、ゴルフ・酒席が仕事場のインナーサークルおじさんの実態を厳しく指摘し続けてきた一方、こういったインディペンデントな男性に力づけられてきたことも間違いありません。

この方は聖火ランナーに復活していただくとして。
次の会長は女性がよいという方向になっているようです。
もちろん、それもよいと思いますが”今女性の方が収まるから”とか”女性にすればいいんでしょ。すれば。”といって女性を選出するというのはまたずれた話です。
こんなことをやっている組織には優秀な女性は来てくれなくなり、ただ衰退するのみ。

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