『読書大全』は「読まねばならぬ」と構えくじけていた難しい本をフレンドリーにしてくれる


「できるビジネスパーソンになるために”読むべき本”を読んでおかねば」と勢い込み専門書棚前に陣取ったものの。あまりの数の多さ漢字の複雑さに呆然とたちすくみ、瞳孔が開いたまま新書売り場に移動してほっと一息をついた。
そんなことを多くの人が経験してきたのではないでしょうか。

いま、『読書大全』という朗報です。
<読むべき本>がキッカリ200冊、紹介されています。

現代社会は、人間がいて、国があって、株やらの資本主義経済が動いていて、初詣やラマダンやクリスマスがあって、地球が温暖化している・・・。
世界がいまのようにつくりあげられるまでには、いろいろありました。
古くは旧約聖書の時代から始まって歴史の時々に天才な人たちがを論じ、記し、分析し、想像し、命名してきました。そしてそれは書籍として存在し、今も簡単に手に入れることができる。

このベスト200冊が著者堀内勉さんによってより抜かれているのが『読書大全』です。
ありがたい。

このより抜き方がオリジナルです。
無謀ともいえるほどの読書量に裏打ちされての200なのだということがわかるのが第1部。ベースとなる知の体系が整理され堀内さんの思考の経緯が披露されています。

『大全』が示すとおり、まずは知の体系に基づいた全てを筆者一人の記憶装置に注ぎこみ、次に遠心力で飛ぶものは飛ばし、さらに手動で200に削ぎ切り、シンプルにディスプレイしてくれているのです。

時代・分野・地域を軸とした宇宙の中に綺羅星のように本が配置されているといったイメージ。位置がわかれば星1つを読み繋げて星座にするもよし、裏側へ飛ぶもよしという読み方ができそうです。

「シンエヴァンゲリオン」を観ようと思ったのだけれど、確か「エヴァンゲリオンQ」というのもあったな、なにか他にもあったような、といっているうちに結局シンエヴァンゲリオンも観そこねていたところを、エヴァンゲリオン全体のその位置がわかることで、「序」「碇」「Q」から順にいってもいいし、いきなり「シン」からでもいい。そのうちに「ガンダム」「宇宙戦艦ヤマト」も・・・といったような。?

うれしいのは、「読書の目的は、本をたくさん読むこと、たくさんの知識を身につけることではない」といいきっていること。
続いて「良い本をじっくり読んで、それを自分のものにした上で、さらに自分の頭で考えるということを目的とするべき」となると急に心もとなくなるものの、ページをめくっていると他人の顔をしていた本がにわかに身近に感じるようになることは間違いありません。
200の読破は狙わず『大全』のよみやすい要約で読了した気分になりましょう。

『ファクトフルネス』と『君主論』が並列に扱われているのも新鮮で、『三国志』陳寿があって「演義」の説明があり吉川英治に触れているのもうれしい。

まずはいま『レオナルド・ダ・ヴィンチの手記』が読みたくてたまりません。

関連記事一覧