2019年のことば10

今年も今日から師走です。
12月といえば流行語大賞がありますが、Magazine7では「2019年のことば10」を選び発表します。

 

ワンチーム

ラグビー・ワールドカップに出場した日本チームのスローガン。
ラグビー・ワールドカップは今年で9回目となり日本で開催されました。
ラグビー・ワールドカップでの日本の活躍は前回の2015年に南アフリカに勝利し「世紀の番狂わせ」と盛り上がり五郎丸歩選手のルーティーンが大人気となった・・・。以来とんとラグビー熱も冷めていたというのが正直なとことです。

ところが、開幕すると、日本はロシアに30-10で勝利したのを皮切りにアイルランドに19-12、サモア38-19、そして1次リーグ最終戦では強豪スコットランドを28-21で下し、4戦全勝の1位通過で初の8強入りという快挙を成し遂げたのです。

テレビ視聴率も右肩上がりで、3-26で敗れたものの準々決勝の南アフリカ戦では瞬間最高49.1%というのだから、昭和の時代の紅白歌合戦くらい国民がラグビーを見たということになります。

ラグビーはルールが難しいといわれていたことで、解説も画面でルール説明を行ったり実況でも状況の説明を入れたりなどの工夫がなされ、新しいことばとして知ることができました。
・相手を引き付けて倒れながらも味方にパスを出す、オフロードパス
・突進してくる相手を二人掛かりで潰しに行くダブルタックル
・タックルして倒した相手からボールを奪うジャッカル
など。

日本チームは31人中15人が外国にルーツを持つ選手です。
日本人選手と外国にルーツを持つ選手がまさにワンチームとして日本の勝利のために全身全霊で戦い勝利する姿が感動をよび、桜のジャージを着たにわかラグビーファンが急増しました。

令和


今年の5月1日から令和時代が幕を開けました。
令和は元号制度が始まってから第248番目の元号です。
一番最初は?↓
「大化」(641年)です。
令和が発表されたのは、4月1日。記者会見で菅義偉官房長官が額縁に収められた墨書を掲げ披露しました。
菅官房長官は「平成」を発表した小渕恵三官房長官が「平成おじさん」と親しまれた実績にあやかろうとしたのか選挙戦で「令和を発表したのは私」とアピールするなどあざとさも見え隠れ。
実際「令和おじさん」はそう浸透はしませんでしたが、額縁パフォーマンスは大流行で、なにかと額縁に文字を書いて出す姿が方々で見られました。

令和は現天皇がご存命中での改元ということがあり、日本中がお祝いムードに包まれました。額縁入り令和レプリカ、令和あめ、令和ハンコなどが発売、役所は5月1日婚姻届けの受付を臨時で拡張するなど「令和婚」も話題となり、令和は一通り楽ませてくれたことばになりました。

タピオカ


タピオカはキャッサバという芋類系の植物からとれるでんぷん。
大きなカップに入ったミルクティーの中にタピオカが入っていて、それを太いストローで飲むタピオカミルクティーが大ブーム。
タピオカミルクティーのブームは今回で2度目。
1度目は2008年(平成20年)の頃、台湾から入ってきました。
それから10年の今年、インスタ映えも手伝ってブーム再燃となりました。
狭いスペースで提供できることがあり、雨後の筍のごとくタピオカ専門店が開店しました。
タピオカを飲みにいく「タピる」ということばも生まれ、カップが大きすぎて飲み切れず道端に放置されるなどの環境問題や、家族がタピオカ店で働くタレントがSNSでトラブルになるなど、タピオカ騒動も報道され社会現象となりました。

 

サブスク


サブスクリプションを縮めたことば。
英語はsubscriptionで購読、加入などの意味がありますが、今年は「定額制使い放題サービス」の意味で広く使われました。

雑誌の読み放題、音楽聞き放題、服の借り放題、ブランド品の借り放題、家事全般、はては家までも、毎月定額を払えばサービスが受けられるといいます。
ですが、実際は雑誌は紙の全ページが見られるわけではなかったり、音楽も聴きたい曲が必ず対象となっているわけではなかったりという現実もありました。

月々お金を払えば、指示することもなくAIがすべて”いいように”やってくれる時代の始まりです。
“いいように”が顧客にとってのうちはよいけれど、提供側にとって”いいように”になるとこれは恐ろしい事。

妻のトリセツ

人工知能研究者、脳科学コメンテイター、感性アナリストの黒川伊保子さんの著書名。
今年大ベストセラーとなりました。

「言っていることに答えたら、怒り出した。妻というのは不可解」と感じたことのある男性は多いでしょう。
それはなぜなのか、どういう場合にそうなるのか、どうしたらよいのか。
これらの疑問について、具体的な事例を出しながら対処法について書かれています。
妻の地雷はどこにあるのか、地雷を花に変えて仲良し夫婦になるためのキーワードは女性脳です。
比較的長い行動行動文脈をもつ女性脳が発揮されるという、ゴミ捨て一つにもゴミ袋を用意する、分別する、曜日を把握して捨てる、掃除する、替えの袋を設置する、などの「見えない家事」があるとの考え方にも共感が集まりました。

書かれているとおりの夫だとちょっとやりすぎな感もありますが、事例はそれぞれ「あるある」で読んで面白い本です。
トレンディドラマで散々女性の言動について学んできているはずなのに、まったく現実に生かされていないということなのでしょう。

続編『夫のトリセツ』も発売されています。

パプリカ


NHKの2020応援ソングとして米津玄帥が作詞・作曲した楽曲。
小中学生の男女で構成される音楽ユニット・フーリンが歌って踊るバージョンが子こどの間で大ブームとなりました。
幼稚園・保育園、小学校では運動会、朝の会、休み時間など暇さえあれば歌い踊りまくったといいます。

今回のブームは子どもがYouTubeで”独学”することで子どもの世界で一気に広まりました。再生回数はなんと1.4億回、NHKでは解説動画も用意されています。

今から20年前の1999(平成11)年には、同じくNHKの番組「おかあさんといっしょ」で歌われた「だんご3兄弟」が大流行、この時はお父さんが会社帰りにCDを買ってきてと頼まれて、大人も巻き込まれての大騒動でしたが、今回大人は蚊帳の外というのも時代だな~と思います。

ソロ


ソロキャンプ、ソロ活、ソロ男(ソロダン)など一人で生活、趣味、娯楽で充実する人々がメディアで多くとりあげられました。

ソロキャンプはお笑い芸人のヒロシが火をつけました。
YouTube「ヒロシちゃんねる」で一人でキャンプをする様子が配信され、これが大人気。
一人で車で山へ入って、火起こしをして小川のほとりでお湯を沸かしてパックのコーヒーを飲む、魚を焼き食べる・・・。この動画が280万回再生されているのです。
一人というところが、一人でいる人、または一人でいたい人の共感を呼んでいるのでしょう。

ソロ男は、容姿、収入などのスペックにはなんの問題もないのに、なぜか独身の人です。自炊、洗濯は普通にこなし生活には困らない。一人旅や一人の趣味に思う存分時間とお金を使うソロ活にいそしみます。
一昔前はいい年した独身男は”なにか欠陥があるのでは?”と変わった人として見られることが多かったですが、最近はソロ男人口が多くなり、「何で結婚しないのー?」「いい人いないのー?」などおせっかいをしてくる人も少なくなりうしろめたさもなくなってきました。
子を持とうとしない姿勢に子だくさんの友人からは白い目で見られることもあるそうですが、独身はほぼ控除なく税金を払い続けていることは忘れられがちです。

中高年層では「孤独」ということばも頻繁に使われるようになりました。
しかも『極上の孤独』(下重暁子・著)が注目されるなどこれまでとはガラリと変わってポジティブな使われ方でです。

寿命が長くなり、結局一人で幸せでいることが重要なのだ、ということでしょう。

免許返納

運転免許証の自主返納。車の運転免許証を更新するには、70歳から74歳の高齢者は高齢者講習が、75歳以上は認知機能検査が義務付けられています。
このハードルに引っかかるかどうかは別として、運転に不安を覚えたら自ら運転の資格を返上すること。

高齢者による交通事故の危険性は以前から多く指摘されてきましたが、今年4月、東京・池袋で87歳の男性ドライバーが運転する車が暴走し、通行人らをはね、3歳女児と母親がなくなるという痛ましい事故が発生。
ドライバーがすぐに逮捕されず、後に元通産相幹部だったことで「上級国民」の特別扱いという批判も手伝い、高齢者の運転について厳しい声が上げられるようになったことがきっかけとなり、免許返納についての議論が盛んに行われました。

高齢者そしてまたその子供世代が、今直面している問題として考える機会となりました。

老後2000万円


6月、金融審議会の市場ワーキング・グループが「老後資金として年金収入以外に約2000万円の資金が必要」とする報告書を発表、大きな波紋を呼びました。
金融長官・財務大臣が専門家に依頼してまとめた報告書にもかかわらず、説明を放棄しなかったことにしようとする麻生財務大臣の「受け取らない」というとぼけた対応にも批判が集まりました。

2000万円の計算は、次のような条件の場合です。
・夫婦無職世帯
・夫65歳、妻60歳
・平均余命20~30年
すると生活費と社会保険料の差額が5.5万円の赤字。
これを20年で計算すると
5.5万円×12カ月×20年=1,320万円
〃 30年で計算すると
5.5万円×12カ月×30年=1,980万円

結局「年金はまだ大丈夫」という政府の対応で騒ぎとしては沈静化しましたが、年金支給額の減少、退職金の減少、寿命の延長という現実がなくなったわけではありません。

スマホペイ


スマートホンのアプリで行うキャッシュレス決済のこと。
10月1日から消費税が10%に増税されました。
この10という重みをどうにかして薄めようと政府が繰り出したのが、ポイント還元制度。電子決済サービス会社はそれぞれ自前の還元率と政府のポイント還元事業を合わせた還元率を競い合い、いったい消費税を何パーセント払ったのかがさっぱりわからなくなっています。
食料品についてはイートインは10%、店が用意したのではないベンチで食べるのは8%、出前は8%など軽減税率の複雑さもワイドショーを賑わしました。

小学生がお金を握りしめてコンビニでお菓子を買うよりも、高収入の大人がスマホで買うほうが安いという、まったくおかしいでしょう、という現実は見過ごされたままでした。

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