パレスチナ問題を理解するための旧約聖書 ②神とのファーストコンタクトから、ユダヤ民族・ユダヤ教の誕生、そして「約束の地」カナンへ。
シリーズ回 | 年 | メインプレーヤー | 特長 | 現代につながるトピック |
② | BC1500 | アブラハム | 大祖先。 | 「約束の地」の根拠。 |
ヤコブ | アブラハムの孫、12人の息子あり。 | 「イスラエル」の名の起こり。 | ||
ヨセフ | ヤコブの息子12人のうちの一人。 | イスラエル一家を繁栄させた。 | ||
ヨセフの死後、エジプト王パロの支配になりイスラエル人は奴隷になる。なんと400年間! | ||||
BC1230 | モーセ | イスラエル民族のリーダー | イスラエル民族、ユダヤ教の始まり。 |
民族としてまとまっていなかった頃の祖先がどのようにしてイスラエル民族になっていったのか。そしてパレスチナで建国することを決めるまでの物語です。
時代ごとに主人公がいます。
主な人物は次のとおりです。
アブラハム
ヤコブ
ヨセフ
モーセ
それぞれのエピソードをまとめます。
目次
「約束の地」に行くことを神と契約した 大祖先・アブラハム
アブラハムは今でいうイラクのペルシャ湾寄りのあたりの都市ウルに生まれました。
このあたりはメソポタミア文明でおなじみのチグリス・ユーフラテス川の河口に近いところです。
メソポタミア文明は紀元前3000年ころから繁栄したのでそれから1500年くらい後のことです。
エジプト文明も同じ頃からずっと栄えています。
ある日、アブラハムは神に目を付けられました。
神は、アブラハムに語ります。「私の示す土地にいきなさい。そうすればあなたのみならず地球上の全民族が幸せになります」と。
アブラハムは神を信じることにし、神との契約成立です。
アブラハムは神が「私の示す土地」を探しに移動を開始しました。
これがパレスチナ問題でよく出てくる「約束の地」の根拠です。
アブラハムは他にも神と契約していることがあり、とても一代で完結できるものではありませんでした。
その契約は息子のイサク、そして孫のヤコブに引き継がれました。
イスラエルの名の起源となる 12人の息子を持つアブラハムの孫・ヤコブ
ヤコブは神との契約で名前をイスラエルと改名しました。
息子が12人いて、後にそれぞれが一族の長になって「イスラエル12部族」が成立します。
これが後のイスラエル王国のもとになります。
この人々はヘブライ語を話すため、ヘブライ人とされています。
ヘブライ一族をエジプトで繁栄させた 12兄弟のうちの一人ヨセフ
ヨセフは12人兄弟のうちの一人ですが、兄たちにいじめられ、エジプトに奴隷に売られてしまいました。
ですが、神が選んだのはヨセフでした。
ヨセフは奴隷でしたが異例の出世をしエジプトの高官になりました。
そして、ヘブライ一族をエジプトに呼び寄せ一族を繁栄させました。
一族は繁栄していましたが、ヨセフが死ぬと様子が一変します。
ヨセフの死後、エジプトの王パロの支配下になります。
パロの下で、ヘブライ一族は奴隷となってしまいました。
これが400年もの間続きました。
ここで奴隷解放のリーダーが現れます。
モーセです。
十戒で有名 奴隷解放のリーダー・モーセ
奴隷解放のモーセの物語は旧約聖書の最大の山場といってもよいでしょう。
ここでユダヤ民族・ユダヤ教、イスラエルが成立するのです。
この物語は旧約聖書のうちのひとつ「出エジプト記」に書かれています。
壮大な映画も作られています。
1956年に制作された作品は「十戒」です。
監督はセシル・B・デミル、主演のモーセはチャールトン・ヘストン、エジプトの王はユル・ブリンナーが演じています。
2014年には同テーマで『エクソダス 神と王』が制作されました。
監督はリドリースコット、主演はクリスチャン・ベールです。
エクソダスは「出エジプト記」の英語(exodus)です。
モーセの生い立ち
モーセはヘブライ人の両親から生まれました。
エジプトはヘブライ人に過酷な労働をさせ、人口を増やさないように男の子は殺さなければならないとしていました。
ところがモーセが生まれた時、両親は殺せずに赤ちゃんのモーセを葦の籠に入れてナイル川に流しました。
それを幸運にもエジプトの女王が拾い育てました。
モーセは王宮で帝王学を学んで育ちました。
モーセへの神の啓示
ある日、モーセが羊飼いの仕事をしていると神が語りかけて「奴隷をこの状況から解放させよ エジプトから脱出させよ」といいます。
モーセはエジプト王と交渉しますが、王はOKとはいいません。
すると、エジプトに十の災いが降りかかりました。
エジプト王は諦め、脱出の許可を出しました。
出エジプト |イスラエル民族(ユダヤ民族)、ユダヤ教が成立
モーセに率いられて奴隷たち200万人前後の大集団が脱出を開始しました。
モーセに率いられて奴隷たちが脱出すると、エジプト軍の兵士が追ってきました。
奴隷たちは逃げますが、前方が海のところまで追い込まれ、逃げ道がなくなってしまいました。
ここでミラクルが起こります。
海が左右に分かれて道ができ、モーセたちは海を横断することができたのです。
この道をエジプト軍兵士たちが続こうとすると、海は元に戻り兵士は溺れて追えなくなりました。
このミラクルにより、モーセはリーダーシップを確立しました。
そして、奴隷たちは神を讃えました。この時イスラエル民族という集団が成立しました。 奴隷たちはイスラエル民族となったわけです。 そしてここに彼らが信仰するユダヤ教が成立したことになります。 |
モーセ十戒を授かる
モーセ率いるイスラエルの民御一行は落ち着き先を探して40年間さまよいます。
途中、シナイ山にたどりつきます。
ここでイスラエルの民は神と重要な契約を結びます。
モーセが神から授かった律法が613ありますが、なかでも重要なものが十戒です。
その箱は「契約の箱」とよばれ御一行様と一緒に運ばれました。
ヨシュア、「約束の地」カナンへ
ヨシュアは新天地の候補地カナンのエリコに目をつけ進入することを決めました。
ところが、イスラエルの民はヨルダン川の東側にいました。
エリコに行くにはヨルダン川を渡らなければなりませんでした。
ここでヨシュアのミラクルが起こりました。
イスラエルの民は大人数でしたが、その先頭には「契約の箱」がありました。契約の箱をかついだ祭司の足がヨルダン川の中に入ると、川の水が干上がって通れるようになりました。
このミラクルで、イスラエルの民はヨシュアをリーダーとして認めるようになりました。
イスラエルの民はこの地で産物の食事をしました。
このことでこのカナンの地が最初にアブラハムが神に約束された「約束の地」であることの証となりました。
カナンとは、現在のパレスチナの当時の地名です。
この後ヨシュアは本格的にこのカナンの地の征服にかかります。
続きは↓
2019.07.23
パレスチナ問題を理解するための旧約聖書 ③カナンへの侵攻、イスラエル王国の建国。
シリーズ回 年 メインプレーヤー 特長 現代につながるトピック ③ ヨシュア モーセの後継者。 カナン(現在のパレスチナ)に侵攻して定住。その土地を12部族で分配した。 BC1004 ダビデ王 イスラエル王国の2代目王。勇者。 エルサレムを...
前の記事に戻る↓
2019.07.23
パレスチナ問題を理解するための旧約聖書 ①概観
パレスチナ問題を考える時、ユダヤ人の行動の根拠となっているのがその歴史であることがわかります。 パレスチナは古代エジプトが繁栄していた頃にはエジプトの範囲でした。 その後も周辺の強国が勢力を拡げては他の強国に滅ぼされるというように入れ替わり立ち替わり支配勢力が変遷しました。 そこに...