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カタールとUAE – Magazine7

カタールとUAE


サッカーアジアカップUAE大会、2019年2月1日に行われた日本vsカタールとの決勝戦は、1-3で日本が負け準優勝に終わりました。

カタールのアリ選手のオーバーヘッドシュートはみごとでした。ゴールを背にして右足で受けて左足で上げて自らシュートとは一生のうちに一度やってみたいことのうちの一つでしょう。
ところで、オーバーヘッドシュートは世界一般ではバイシクルシュートというそうです。

UAEのカタールへの侮辱行為

このカタール、準決勝ではUAEと戦い4-0で勝利しましたが、その試合では観客席からペットボトルが投げ込まれたり国歌斉唱ではブーイングが起きました。
このディスりは「UAEとカタールが断交しているから」と報じられましたが、細かくいうと「UAEやサウジなどの周辺国とカタールが断交しているから」です。

なぜ断交しているのか

断交が表明されたのは2017年6月。
カタールと断交している国はサウジアラビア、バーレーン、UAE、エジプトです。

なぜこれらの国はカタールと断交しているのでしょうか。

それは、カタールがもともと仲間だったのに近年独自外交をやり過ぎて盟主サウジアラビアがぶちキレたというのがもっぱらの見方です。

もともとの関係は

カタールとこの4カ国はどのような仲間だったのかを次の4点で整理します。

1)湾岸仲間

カタール、UAE、バーレーンはペルシャ湾岸に位置しています。
中東地域は砂漠や山脈で陸上交通が発達せず、ペルシャ湾は交通の大動脈であり、沿岸地域は内陸部への拠点の都市として発展しました。
小国で領主が政治の実権を握っているのも共通する特徴の一つです。

2)元イギリス植民地仲間

イギリスは18世紀以来インドを支配してきましたが、さらにペルシャ湾へも勢力を広げてきました。
第1次世界大戦の頃にはクウェート、バハレーン、カタール、UAEを支配下に収めました。
小さな領主国に経済的魅力はありませんでしたが、ペルシャ湾運行の安全確保とフランス、ドイツなどの進出を阻止する狙いがありました。

3)石油産出国仲間

経済的に魅力なく貧しい漁村にすぎなかった、バハレーン、サウジアラビア、クウェート、UAE、オマーン、カタールに大転機が訪れます。

1932年、石油が発見されたのです。

当初は安定的な収入が入るようになったものの利権は欧米の石油会社に握られていました。ところが、1960年にOPEC(石油輸出国機構)が設立されてから湾岸諸国は力をつけ、1970年代と1980年代の石油ショックをきっかけに莫大な石油収入をえて世界有数の豊かな国に変貌していきました。

4)イスラーム・スンニ派仲間

サウジアラビア、バーレーン、UAE、エジプト、カタールはイスラームのスンニ派です。
イスラームでスンニ派でないのが、湾岸をはさんだイランです。
イランは1979年に革命がおこりシーア派が政権をとりました。
それ以来、周辺のスンニ派の国に危機感が生まれます。
それぞれ、スンニ派が権力を握っているとはいえ、国内にはシーア派の住民も存在し、イランの二の舞になる可能性もあると考えたからです。

この危機感からイラクのサダムフセインは1980年イランと戦争を開始しました。
周辺国はイラクを支援し、イランからの防衛体制を固める目的でGCC(湾岸協力会議)を1981年に結成しました。
メンバーはサウジアラビア、クウェート、バーレーン、UAE、オマーン、カタールの6カ国です。

日本の地図で「ペルシャ湾」と書かれている湾ですが、ペルシャはイランの古い呼び名のため、アラブ諸国の間では「アラビア湾」と呼ぶべきという考え方があります。
他の国では、双方に巻き込まれることを避けて単に「湾岸」と呼ばれるようになっています。

カタールの変化

対イランで結束していたGCCでしたが、関係に変化がでます。
カタールが政策や外交で独自の路線をとりはじめたからです。
独自路線の主な点は次の通りです。

天然ガスの開発

カタールは1990年代から天然ガス開発を本格化させて、生産・輸出によって急速な高度成長を遂げます。
2017年には輸出額で世界2位で、巨額の利益を世界中の有名資産に投資しています。

天然ガス輸出ではUAEも世界12位でこちらも政府系ファンドの規模は世界2位、世界中に不動産を保有しています。
有名なのは、ドバイの「ブルジュ・ハリファ」。世界一高い高層ビルとして観光名所となっています。

ブルジュ・ハリファ

カタールは1998年までは日本の政府開発援助(ODA)の対象国でしたが、2017年の一人当たり名目GDPは世界第7位の富裕国となっています。
ちなみに、日本は25位、UAEが26位、サウジアラビア41位。

一人当たり名目GDP(2017年)

 

順位 国・地域名 一人当たりGDP(ドル)
ルクセンブルク 105,863
スイス 80,637
マカオ 77,111
ノルウェー 75,389
アイスランド 70,248
アイルランド 68,711
カタール 61,025
アメリカ 59,792
シンガポール 57,713
10 デンマーク 56,631
11 オーストラリア 55,693
12 スウェーデン 52,925
13 オランダ 48,555
14 サンマリノ 47,595
15 オーストリア 47,347
16 香港 46080
17 フィンランド 45,927
18 カナダ 45,095
19 ドイツ 44,769
20 ベルギー 43,488
21 ニュージーランド 41,572
22 イスラエル 40,273
23 フランス 39,933
24 イギリス 39,800
25 日本 38,449
26 UAE 37,733
27 バハマ 32,661
37 バーレーン 24,326
38 台湾 24,292
39 スロベニア 23,654
40 ポルトガル 21,159
41 サウジアラビア 21,096

 

アルジャジーラ

カタールは1996年に衛星テレビ、アルジャジーラを開局しました。
中東で初めてのアラブ世界発のニュースが世界に発信されました。
アルジャジーラは欧米のジャーナリズムに学び政府から独立した取材・報道がウリで世界に存在感を印象づけています。
サウジアラビアに批判的な報道がされることもあり、サウジの怒りをかっています。

米軍基地

中東最大の空軍基地を提供しています。
アメリカとは良好な関係にあります。

対イラン関係

サウジアラビアが対イランに対し徹底的に強硬なのに対し、カタールは対応に一線を画しています。
カタールが新たに開発を進めている天然ガス田がイランのガス田とつながっていて関係を悪化させたくないとも見られています。

サウジアラビアぶちキレる

このイケイケ状態のカタールにサウジアラビア、バーレーン、UAE、エジプトがカタールに対して断交をつきつけ、修正を迫った主な項目は次の通り。
1)イランとの関係を縮小せよ。
2)ムスリム同胞団などテロ組織との関係を断絶せよ。
3)衛星放送アルジャジーラを閉鎖せよ。
4)カタールにあるトルコ軍基地を閉鎖せよ。

2)ムスリム同胞団。おまたせいたしました、ここでエジプトがでてきます。
ムスリム同胞団は、1928年エジプトで創設されたイスラム主義組織です。

組織が拡大するにつれ政権から脅威とみなされ弾圧されました。
弾圧により一部が過激化しますが、本筋は穏健派路線で選挙による政権獲得をめざし活動していました。
2011年、アラブの春が起こりムバラク政権が打倒されるとムスリム同胞団の政治組織は選挙で勝利し党首が大統領になりました。
ところが、このムスリム同胞団政権は前政権の事実上の軍事クーデターによって転覆させられ、代わりに政権を取り戻したのが今の政権です。

カタールはムスリム同胞団の活動に一定の理解を示していることで結果的にイスラム過激派の間を結びつけているといわれています。
エジプトにとってムスリム同胞団をかばっているカタールは許せないというわけです。

カタールは平気なのか

サウジアラビアは断交しただけでなく、カタール航空の航空機をサウジ領内から閉めだしたり経済封鎖を行うなどし、さらには国境沿いに運河を建設してカタールを島にしようとの計画もされています。

そんな中、カタールに手を差し伸べた国がトルコです。
トルコは断交後、イランとともにカタールに食料を援助しました。
カタールは食料はサウジアラビアとUAEに依存していましたが、輸入先をトルコなどに変更し市民生活への影響を抑えることに成功しました。

カタールはトルコのリラが暴落した際には総額150トルコに億ドルの支援を表明したり、5億ドル相当のボーイング747型機をプレゼントするなど関係を深めています。

カタールはトルコに多大な投資を行っていて経済的つながりが強まっていたのです。

カタールとトルコといえば、2018年にシリアで拘束されていたジャーナリストの安田純平さんが解放された時に日本で注目を集めたコンビです。

日本との関係は

日本は世界一の天然ガス輸入国です。
天然ガス輸入国

カタールからは3番目に多く輸入していて、日本にとって重要な国です。
日本の天然ガス輸入先

一方原油はサウジアラビア、UAEが輸入先上位国で、こちらも重要な国です。
日本の原油輸入先

2019年2月にはサッカー日本代表の中島翔哉選手がポルトガルのポルティモネンセからカタール1部のアルドゥハイルへ移籍すると報じられました。移籍金は約43億90000万円で中田英寿選手を上回る日本人選手として最高額ということです。
天然ガスで支払ったお金が日本人選手獲得に回っているのかと思うと良いのだか悪いのだかという気がします。

さて、サッカーアジアカップUAE大会、カタールのサポーターが現地入りするのは難しい状況だったということで、準決勝はUAEが売れ残ったチケットを買い上げてUAE国民に無料配布したといいます。

そして、日本vsカタール。この試合ではオマーン人らがカタールを応援しました。
オマーンはGCC加盟国ではあるものの、もともとインドやアフリカの影響が強い大国で対イランとも関係をもち中立的な立場にいる国です。

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